セクシュアルハラスメントに対する懲戒処分について

既婚者である上司が、嫌がる部下に対し「何度も食事に誘う」「好意があることを示すメールを勤務時間中に送る」を繰り返し行ったことが判明し、行為者である上司もその事実を認めているようなセクシュアルハラスメント問題が生じた場合、会社としても秩序を保つため就業規則に定められた対応を行うことが求められます。

処分までの流れ

一般的には、次のような流れとなります。

1. 事実確認

相談者や行為者、周囲の社員からのヒアリングや証跡などで確認しますが、当該ケースではこちらの部分はすでに完了しています。なお、事実確認を行う際には、相談者の同意を得てから行うようにしましょう。

2. 就業規則にて懲戒事由の確認

就業規則に、セクシュアルハラスメントに関する項目の記載があるか、さらに懲戒処分についての記載があるかを確認しておきましょう。

3. 懲戒処分(量刑)についての検討

公平性を確保するために、社内での過去の懲戒処分と比較しましょう。また、人的被害の大きさや、行為が反復継続していたか、悪質であったか、行為者が過去にも同じような行為があったか、会社としてそのような行為を強く戒めていたか、などを確認しましょう。

4. 就業規則に則った適正な手続き

本人にも弁明の機会を与えます。また、懲罰委員会などを経て懲戒処分を定め決定している場合は、会社内で定めたルールに従って手続きを行います。

5. 処分内容の決定

1~4を踏まえ処分を決定します。

6. 本人への通知

決定した処分を書面で本人に通知します。

7. 処分の公示

社内で公示する場合は、プライバシーの侵害や名誉棄損との絡みもあり、慎重な判断を要しますが、企業秩序を保つためといった合理的な理由があり、かつ、就業規則にも公示する旨の定めがある場合には、公示も可能と考えられています。

ただし、セクシュアルハラスメントの場合は、行為者の今後の社内での将来性(行為そのものは許されませんが、行為者の将来までつぶすことは適切ではありません)や、被害者の心理的負荷なども考えて公表をしないことも考えられます。どうしても行う場合は、氏名や部署は伏せ、懲戒処分事由と懲戒処分の量刑だけを公示すると良いでしょう。