労務顧問
労務顧問として、メンタルヘルスの体制構築や運営を支援していただきました。現在は、社会復帰できない状態で辞めてしまう社員がほぼゼロになりました。
株式会社構造計画研究所 様
株式会社構造計画研究所の皆さまに、労務顧問サービスを導入された経緯や導入後の具体的な活用方法、評価などを伺いました。
株式会社構造計画研究所 執行役員総務部長 秋元正博氏(左) 総務部 総務室 産業カウンセラー 小島有香子氏(右)
株式会社構造計画研究所について
1959年に構造設計事務所として設立。「大学、研究機関と実業界をブリッジするデザイン&エンジニアリング企業」として、人工構造物を取り巻く自然現象(地震、津波、風など)の解析やシミュレーション、情報通信分野でのソフトウェア開発、製造分野へのCAD/CAEのソフトウェア販売、意思決定支援分野のコンサルティングなどを提供している。従業員数623名(2021年4月1日時点)。
スポットではなく顧問契約を選んだ理由
はじめに、労務顧問サービスの導入経緯について教えてください。
中村・中辻事務所を知ったきっかけは、中辻先生が登壇されたセミナーでした。その頃当社ではメンタルヘルスに問題を抱えた社員が増加傾向にあり、会社としてどのような体制作りを目指していくべきか、広く情報を集めていました。
セミナーを通じて、当時の社内規程がフィジカル面での問題ばかりを想定していてメンタルヘルスで休むことを想定した作りになっていなかったことや、労働安全衛生法をはじめ関連する法律についても理解不足だったことがわかりました。そして、0次から3次予防まで、どのような体制やルール、プロセス、組織風土などをつくっていけば、会社としての責任を果たしたと言えるのかを判断するためには、社労士のような外部の専門家のサポートが必要だと考えました。
最初からスポットではなく顧問契約を希望されていたのですか?
いいえ。当社の抱えていた課題が、一度や二度の相談だけでは解決しそうにないことは分かっていましたが、社労士の方と継続的に関わることができるというイメージを持っていませんでした。すでに当社には契約している社労士がいたのですが、報酬業務に範囲を限定した契約でしたし、弁護士などへの依頼も基本的にはスポット契約でした。
ですから中村・中辻事務所にはじめて相談を持ちかけた時は、こちらの悩みや課題を全てお伝えした上で「どのような形で、どの程度関わっていただけますか?」というようなかなり曖昧な質問をしたことを覚えています。
その際に、月に一度の打ち合わせをベースとした「労務顧問サービス」の説明を受けました。さらに当社の状況を踏まえた上で、これからどのようにメンタルヘルスの体制を構築していけばいいかを提案してくれました。
ソフト面/ハード面さまざまな要素が絡み合うテーマについて、まずどこに焦点を当てるべきか。何は後回しにしても大丈夫か。どの順番で進めていって、当面のゴールをどのレベルに設定するか。そして取り組みの途上では、いつ、どんな事が起こりやすくて、そのような時にどう支援していただけるのか。
ただ単に「この範囲内でアドバイスします」ではなくて、これからパートナーとして一緒に体制構築に関わってくれるイメージが明確になり、労務顧問サービスの契約を決めました。
また中村・中辻事務所には、さまざまなバックグラウンドを持った社労士の先生がいらっしゃいました(メーカーで技術者として働いていた方、労働基準局に勤務していた方など)。色々な視点から現実に即したアドバイスを頂けそうだという期待も、契約を後押ししました。
社会復帰できない状態のまま辞めてしまうケースがほぼゼロに
実際に労務顧問サービスを活用する時の流れについて教えてください。
月に一度の打ち合わせが軸になりますが、直接会ってお話しできる2時間をより実りあるものにするために、事前に社内で議題案をつくります。上述の通り契約当初はメンタルヘルスが中心でしたが、現在は労務管理全般について相談しています。
議題設定のために、まずは社内でヒアリングをしています。約10名の総務・人事部門のスタッフに、次回はどんな話題を扱ってほしいかを聞きます。たとえば「育児介護法の改正について」「みなし残業代の支給について」「将来を見据えた働き方改革のロードマップ」など、短期的なものから中長期的なものまでテーマは多岐に渡ります。
テーマによって相談の仕方も異なります。当社スタッフだけでは掴みきれない最新情報や他社事例を教えてほしいという場合もあれば、当社内で作成した案が法律的に問題ないかチェックしてほしいというという場合もあります。一方で経営課題に近いような簡単に答えが出ないようなテーマでのディスカッションを依頼することもあります。
取捨選択して優先順位をつけた次回の議題案が出来上がったら、それを中村・中辻事務所にお伝えします。すると先生の方から「時期的にこの件もお話ししたい」「前回の宿題だった○○の進捗も確認した方がいいのでは?」とご提案をいただく時もあります。決定した議題に応じて、打ち合わせに参加するスタッフはそのつど変わります。
以上のようなサイクルを回していくのが通常の流れです。他にも簡単な問い合わせや、緊急で解決しなくてはいけない問題が発生した場合に、メールや電話で相談をすることもあります。対面ではなく、オンラインでの打ち合わせも何度か経験しました。
労務顧問サービスを活用しながら、メンタルヘルスの体制構築については現在どこまで進んでいるのでしょうか。
まだ道半ばではありますが、体制構築を始める前にはなし得なかった事が実現できるようになりました。具体的には、休職した社員が社会復帰できないほど体調が悪いまま辞めていってしまうというケースがほぼゼロになりました。
0次予防、1次予防の段階で不調になる人を減らしていくということはもちろん大切ですが、完全に無くすことはできません。会社として重要なのは、不調になってしまった社員、休職してしまった社員を復職までどうやって支えていくかだと考えていました。
従来は不調者と会社との関係は薄く、本人が医師や家族の支援を受けて治していくという状態でした。それを、産業医・カウンセラー・EAPなどの外部リソースと、社内の担当者・衛生管理者・元の部署の上司や同僚などでネットワークを形成し、その中で不調者を支えていく仕組みを構築しました。
就業規則を改訂し、ネットワークを作って役割分担が決まれば後はうまくいくというものではなく、実際に運用していくのは大変でした。悪化する前にいかに早く周囲が気づくことができるか。休職時にはいつ、誰が、どの程度連絡を取ればいいのか。
「先月、休職者とこんなやりとりがありました」
「こういう事が起きた時は、どこから対応すればいいのでしょうか?」
月に一度の打ち合わせでは、社労士の先生にさまざまな報告や相談をしました。たくさんのアドバイスを頂きながら、ケースバイケースで対応していくための運用ノウハウを蓄積していきました。その結果、多くの不調者を復帰までサポートすることができるようになりました。社会復帰できる状態だが、仕事の向き不向きなどを考え直して他の会社に就職する、という形で元の職場に戻ってこない場合もあります。ただし、他社に行くことも含めて、全く社会復帰が見込めない状態で退職してしまうということはほぼ無くなりました。
完成形だとは思っていませんが、数年かけて構築してきた現在の体制にはある程度の手応えを持っています。東京都商工会議所や自治体からの依頼で、当社の取り組みを発表する機会をいただいたこともありました。
現場の辛さに寄り添ってくれる、専属トレーナー
労務顧問サービスを利用していて良かったと感じるのはどんな時ですか?
ハラスメントが発生した、労基署の臨検が入る、といった時にすぐに相談できるのはやはりありがたいです。ベースとしてずっと積み重ねてきたやりとりがあるので、そのつど背景情報や基本的な当社の指針などを説明する必要がありません。いつも的確なアドバイスをしてくれます。
そして中村・中辻事務所の社労士の先生は、常に私たちに寄り添ってくれます。相談の内容と同じくらい、時にはそれ以上にありがたく感じています。
普段はポジティブで穏やかな社員でも、メンタルヘルス等で不調に陥ってしまうと極度にネガティブになり、場合によっては攻撃的な言動をとることもあります。辛い状況の社員と接する中でマイナスのエネルギーを浴びて苦しくなったり、落ち込んでしまったりすることもあります。そのような時に先生は「そういうこともあるよね」と励ましてくれたり、もっと早い段階で「今、ちょっと大変なんじゃない?」と気づいてくださったりします。
この仕事は、接する本人から感謝されることはほとんどありませんし、会社から大きな成果を認められるような種類の仕事でもありません。それでも会社組織に欠かせない大切な仕事なのだという使命感を持ってやっていることをわかっていただいていて、先生も同じ気持ちで、同志として一緒にいていただけるというのが、本当に心強く思っています。
メンタルヘルスの体制構築に目処が立った後も、労務顧問サービスを継続利用されている理由は何ですか?
本件に限らず継続利用している外部サービスは毎年評価や見直しをしています。その中で、この労務顧問サービスは継続する価値があると判断して現在まで至っています。ただ一度プラン変更をしています。最初の契約では社内規程などの成果物作成まで含めたプランでしたが、現在は自分たちで作れるようになったので、成果物作成はオプション扱いとするプランに変更しました。
「今月は何も無いですね」と相談したいテーマが枯渇したことは今まで一度もありません。働き方改革のような大きなトレンドから細かな法改正まで、社内リソースだけでキャッチアップするのは極めて困難です。後手後手の対応で余計なコストを費やすよりも、初めから専門家のアドバイスを得ながら効率的に動いていった方がいいと実感しています。労務顧問サービスは、当社には優しい価格設定だと思っています。「私たちではなく、先生の方がもう更新したくないと思っているかもね」という冗談を社内で言ったりしています。
中長期的な視点での対話も多く重ねてきました。経営や事業の戦略に沿う形で、今後の労務管理はどうあるべきか。当社は昔から時間の使い方を社員に委ねて自発的に取り組む風土があり、そこから競争力のある技術を生み出してきました。その良さを残しながら、これからの時代の働き方やそれを支える労務管理のあり方をデザインしていくことが求められています。その道程を中村・中辻事務所に伴走してもらっています。当社にとって、労務管理分野の専属トレーナーのような存在です。
労務顧問サービスの導入を検討されている企業にアドバイスがありましたら教えてください。
当社自身、このようなサービスを提供している社労士事務所があることを知りませんでしたし、実際にサービスを受けてみないと実感としてわからない部分も多いと思います。
顧問契約締結後は、抱えている課題や悩みを全て話してみることをおすすめします。そうすれば中村・中辻事務所の方から、何を、どの順番で、どのようにサポートできるのかを提案してくれるはずです。
どうしても社労士の先生というと細かな問題や足元の法律という部分に焦点を絞りがちですが、そこはいったん置いておき「会社としてこうありたい・こうやりたい」という理想を伝えたら、それをきちんと受け止めて一緒に考えてくれると思います。
お忙しい中、ありがとうございました。
取材日時:2021年8月(文中の組織・数値に関するものは全て取材時時点です)